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■ 小林種苗 顧客事例 - 兵神機械工業 ―兵神ファーム―
船舶機器メーカー兵神機械工業、農業事業部長の井澤達文氏に、挑戦されている農業分野のこと、小林種苗との取り組みについてお聞きしました。
(兵神機械工業/兵神ファームについて)
「人間力を高め、信用第一で社会貢献する」を経営理念とし、創業以来船舶機器の製造・開発に従事している兵神機械工業。2008年より兵神ファームを開墾し、熱い想いを胸に農業の分野に乗り出しました。
もくじ
船舶機器メーカーの農業への挑戦
水耕栽培ハウス「オンディーネVH」を開発
直売所の拡大、販売ルートの開拓を
小林種苗をパートナーに
農業を若い世代に
船舶機器メーカーの農業への挑戦
― 農業への取り組みを始めた理由を教えてください。
創業80年あまり、わたしたち兵神機械工業は船舶機器メーカーとして、おもに船舶用ポンプの製造・開発を行ってきました。農業への取り組みを始めたのは当社社長である友藤の「農業をやりたい」というひとことからです。地元の播磨平野では若い世代の農業離れが大きな要因となり、年々耕作放棄地が増えています。播磨町では専業農家はゼロという状況です。友藤はその状況に危機感を抱き、若い世代に農業に目を向けてもらい、農業を活性化させることで地元に貢献したいと考えていました。
わたしが代々続く農家の出身ということで相談を持ちかけられたわけですが、農業を取り巻く情勢というのはひじょうに厳しい。それでも3年間にわたり、農業をやりたいと言い続けましたから、これはそうとうな想いだと。だめでもとにかく全力で取り組んでみようと決意しました。
― 農業への取り組み。これまでの推移についてお聞かせください。
井澤達文氏
「とにかく全力で取り組んでみようと」
農業への取り組みを開始したのは2008年です。農家の方の好意で農地をお借りして開墾、「兵神ファーム」として実験を開始しました。実験の目標は「長時間労働を必要とせず、安定した収入を得られる農業を実現する」ということ。重労働、低収入の農業では意味がありません。
まずはキャベツやニンジンなどを作ることから始めましたがうまくいきませんでした。作業は大変にもかかわらず、収入にまったく結びつかないことを痛感。実験を繰り返し、検討を重ねた結果「水耕栽培」という結論に達しました。2010年のことです。
水耕栽培は天候に左右されませんし、軽作業ですみ、一人でも管理していくことが可能だというメリットがあります。さらに水、肥料の循環と制御には、当社が長年船舶機器製造で培った船舶ポンプの技術を生かすことができますから。すぐに水耕栽培に切り替えたわけです。
水耕栽培ハウス「オンディーネVH」を開発
― 水耕栽培ハウス「オンディーネVH」の特色についてお聞かせください。
「オンディーネVH」は水耕栽培装置とパイプハウスのセットになっています。水耕栽培というのは露地栽培にくらべて場所をとらず生産性が高いという利点がありますが「オンディーネVH」では、さらに面積効率を上げるため、栽培棚をスライド式にして通路のスペースを最小限に抑えることで、一般的なものの2倍の面積を確保することができました。
液体肥料は循環槽に自動供給され、濃度はつねに一定に保たれます。循環槽には殺菌装置が設置され連続自動殺菌を行うことができます。さらにパソコンや携帯電話からハウス内のカメラを通して作物の状況や室温チェックしたり、遠隔操作システムで機器を制御することも可能です。自動制御で安定した管理ができますので農業未経験者にも安心です。
さらにパイプハウスについては、国産のハウスではコストが高いため、海外で材料を調達、当社でパイプの折り曲げなどの加工を施すことで大幅なコストダウンを図りました。
― 農業未経験者にも安心とのことですが、導入した後のサポート面はどうなっていますか?
船舶の機器メーカーとして「船の安全と航海を守る」ことは使命です。船舶というものは、燃料を送るポンプが壊れてしまうとエンジンが止まり航海ができなくなってしまいます。通常、船舶には1基故障しても大丈夫なように2基のポンプが積んでありますが、もう1其が壊れないという保障はない。調子が悪いという段階ですぐに連絡が入り、世界中に派遣しているサービスマンがかけつけます。そのような徹底したサポートを行っています。
これまで培った精神でわたしたちにしかできないサポートがあると信じています。「オンディーネVH」も導入したら終わりではありません。機器のメンテナンスはもちろん、その他のご相談もお客様の状況をお聞きしながら、技術研究開発を行い安心してチャレンジすることができるように全力で支援いたします。
水耕栽培装置「オンディーネVH」。自動制御、遠隔操作システムで安定した管理を実現する
直売所の拡大、販売ルートの開拓を
― 導入すれば、すぐに安定した収入を得ることができるんでしょうか?
水耕栽培ハウス「オンディーネVH」を導入すればすぐに栽培が可能です。しかし、安定した収入となると、ことはそう簡単ではないのが実情です。ハウス1棟は1反の1/3の広さで建設することができますが、わたしたちの試算では、経費や人件費、それに減価償却をしても、じゅうぶんな売上と利益を確保することが可能です。しかし、この試算は飽くまでも付加価値の高いものを直売所で販売した場合の試算。市場に持ちこんで販売した場合は販売単価が低くなりますので、売上と利益が下がってしまいます。
農家が増え、出荷が増えてくることを考えれば、直売所の規模、直売所そのものの数が不足するおそれがあります。そこでJA兵庫南さんをパートナーとして、直売所の拡大をお願いし、販売ルート開拓の協力を仰いでいます。農家が安心して農業に従事できることを目標とするわたしたちにとって、販売ルートを確保することは責務だと考えています。
ハウス内には9列の栽培棚が並ぶ。離れたところでも内部の確認やシステムの制御が可能。
小林種苗をパートナーに
― 小林種苗との取り組みについてお聞かせください。
前述したとおり、パイプハウスから水耕栽培装置まで当社で提供することができます。しかし、作物の種や苗はわたしたちで作ることができません。そこで作物の種をおもに小林種苗さんにお願いしているわけです。わたしたちが実験を始めたときは数社の種苗会社から種を購入していましたが、今は小林種苗がメインの取引先となっています。
―小林種苗を選ばれた理由は?
ちょうど一年ほど前になるでしょうか。担当の末澤さんが当社に飛び込みで営業に来られたのがきっかけです。何度か種の手配をお願いするうちに「あ、この人は小さな種ひとつのことでも、真面目にきっちりと対応されるな」と。小さなことでもきちんと大事にする人だなと感じたのを覚えています。何かあれば電話一本で相談に乗ってくれますし、種だけではなく資材などひととおり何でも手配してくれますから。ひじょうに楽というのもあります(笑)。
その後、話をうかがってみると、もともと農業への関心が高く、農業も少しやられていたということでした。なかなかの人だなと感心しました。加古川農業青年クラブの方たちとも引き合わせていただき、さまざまな意見を聴くこともできました。とくに若い農家の意見はわたしたちにとってとても貴重なものです。
相談を受け、作物の生育状況を確認していく
農業を若い世代に
― 小林種苗に期待することは?
さまざまな農業の人と関わることが多い会社ですので、ともに協力しながら農家が潤う仕組み作りをしていければと思います。販売先を紹介してもらい、農家の売上が増えていけばしぜん種や苗の需要も大きくなっていく。その種は小林種苗さんにお願いしていく。そういう循環になっていくわけです。わたしたちは種は作ることができませんからね。
― 今後の展望についてお聞かせください。
農業が重労働で低収入というイメージを払拭していきたいということ。今までは先祖代々の土地を守るために高齢になっても農業を続けざるを得ない状況がありました。農業をやめて10年農地を放棄してしまえば、その土地が国のものになってしまうという事情もあった。しかし、2009年の農地法の改正で状況が大きく変わってきていると感じています。原則、自由に農地の貸借ができるようになりましたので、農地を持っていない人も農業ができるようになりました。若い世代の人たちがもっと農業に興味を持ち、安心して従事することができる環境をしっかりと整えていきたいと思います。
井澤様、本日はお忙しい中、
貴重なお話をありがとうございました。
※ 兵神機械工業の
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※ 取材日時 2011年10月
※ 取材制作:
カスタマワイズ